紬の着物ができるまで

きものには織の着物と染のきものがあります。
織の着物は先染織物、染の着物は後染織物といわれ、その違いは目で見ても、着ていても風合いや心地が違います。

どちらもそれぞれの良さがあり、染の着物が好きという人もいれば、私は織の着物の方が好きという人もいます。
それぞれの製織、染色工程に違いがあり、聞けば聞くほど興味が深くなります。

この記事では紬の着物の製織行程について書いていきます。

前記事で繭について書きました。
お蚕さんが2昼2夜かけて糸を吐き出し繭を作ります。
その繭から糸をとる時から、織の着物と染の着物は違います。

繭からは本来長い一本の糸がとれますが、紬に利用した糸は、その長い糸がとれない繭からとるいとでした。玉繭やくず繭といった、長い糸がとれない繭は本来廃棄処分になるものでした。
その廃物利用として繭から糸をひくのではなく、一旦広げて真綿を作り、その真綿から糸を紡いで紬糸を作り出しました。

ですから、紬糸には節があります。
その節も紬の特徴の一つです。生地になってからもその節は存在を主張します。紬が持つ素朴さはこの紬糸の節にもあるのかもしれません。

節はこのようにきものの表面に現れます。

紬は他の絹織物とくらべると平坦でないのはこの節があるからです。平織りの為光沢はありませんが、素朴で温かみを感じる生地です。着ると軽くて丈夫なのも特徴です。
紬は廃物利用の為現在でも正礼装の着物にはなりません。高価なものでも格は高くないというのが紬です。

紬の着物の行程

煮繭(しゃけん) 繭には接着剤のやくめをするものとしてセリシンというにかわ質の不純物が付着しています。煮繭はその不純物を取り除く作業です。

真綿かけ 煮た繭を、ぬるま湯の中で袋状に広げる作業です。

糸紡ぎ 真綿から糸を引きながら指でよりながら糸を紡ぐ作業です。

目色染 絣の色を目色といいます。その目色を染める作業です。

整経 経枠(たてわく)巻き取りと言われ、大きな枠に糸を巻きます。

墨付け 絣括りをする部分に目印をつけます。

絣括り(かすりくくり) 墨付けされた部分を糸でしばります。

本染 たたき染めで染めます。糸で括った部分は染まらず絣糸が出来ます。

筬通し(おさとおし) 筬に経糸を通します。

はた織り 織機で織ります。手織機には高機(たかはた)、地機(じばた)があります。
   
検査 きびしい項目を検査受けします。結城紬だと15項目もあります。

一反の反物を作るのに必要な紬糸は8ぼっちです。ぼっちとは紡いだ糸を入れる円筒形のケースです。
紬糸8ぼっちを作るのに必要な真綿は8秤です。1秤が真綿約50枚ですから約400枚の真綿が必要です。
その真綿をつくるのに必要な繭の数は約2000~2500個です。
お蚕さんが2000~2500匹必要ですね。
そのお蚕さんを育てるのに桑の葉が約90kg

さかのぼっていくと、紬の着物一枚分の紬地を作るのに、時間も手間も数もたくさんたくさん要してます。
そんなことも感じながら着物に袖をとおしたら、また別の意味でもっともっと着物が大好きになるんだと思います。

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