関西では織の着物と言えば「大島」とほとんどの人が言います。
関東へ行くと、織の着物と言えば「結城紬」です。
どちらがいいということはないのですが、私自身母が用意してくれた織の着物は大島でしたし、着物の勉強をするまでは結城の存在はほとんど知りませんでした。
幸せなことに私は教室でたくさんの大島や結城を見てさわって体にあててみることが出来ます。
反物や生地だけでなく、織機や実際の製作者の方にお話しを聞いてお勉強する機会もあります。
そんな知識や写真を交えて、今回は結城紬について書かせて頂きます。
百貨店や呉服屋さんでは並んでも数点の結城紬をずらっと並べて見れるのはほんとに幸せです。
結城紬の少しかたいお話しをしますと、結城紬は、1956年(昭和31年)に重要無形文化財として指定されました。その後2010年(平成22年)にはUNESCO無形文化遺産にも登録されています。
UNESCO無形文化遺産とは、民族文化財、フォークロア、口承伝統などの無形のものを保護対象とすることを目指したもです。
日本では能楽、人形浄瑠璃文楽、歌舞伎や京都祇園祭の「山・鉾・屋台行事」、和食や和紙などが登録されています。
手工芸で繊維ものだと、小千谷縮・越後上布と結城紬がUNESCO無形文化遺産です。
結城紬が重要無形文化財に登録されたのは、「糸つむぎ・絣くくり・地機(じばた)織り」3つの工程です。この3工程は全て手作業で行われます。
真綿から糸をつむぐのに1~2カ月かかります。その後40以上の工程を経て、地ばたで織って製品になるまでには最低4カ月細かい柄なら2年以上かかるものもあります。
おそろしい手間と時間をかけて手作りされています。
これが袋真綿です。
袋真綿を引き伸ばして「つくし」にからませます。
袋真綿から糸状に引き出しながら糸を紡いておぼけに入れます。
左に写っている棒状のものがつくし、円筒形の入れ物がおぼけです。
これがボッチです。
ボッチは紬糸のかたまりです。
目をつぶって手のひらの上にのせると気がつかないくらい軽いです。
こんなかたまりを手の上にのせて気付かないはずがないと思ってましたが、やってみた人全員がわかりませんでした。
目を開けた時に「えっ?」という反応をしたのが同じ反応で面白かったです。
上に乗っている紙を引っ張ると糸が出てきます。
このボッチの糸はぜんぶつながっています。
絣を染めるために紬糸を木綿糸でくくります。
まず糸を薄い色で染めます。
その後くくります。
そのくくった糸を更に濃い色で染めます。
糸でくくった部分は濃い色に染まらず、最初に染めた薄い色がそのまま残ります。
地機(じばた)で織ります。
じばたは経糸が腰に巻き付けた腰巻につながっています。
体全体を使って織る高度な技術を要する織物です。
この手間と時間を考えたらあんなに安くて大丈夫なの?と思ってしまいます。
結城紬のあたたかさは素材だけでなく作り手の心にあるんだなと感じます。
結城紬についてはまだまだ書くことがありすぎるので、また別の機会に書かせて頂きたいと思います。