お召しの着物ってなんですか?
そんな質問をけっこう受けることがあります。
お召しはお召し縮緬(おめしちりめん)の略です。
よく見ると生地全体に細かいしぼがあります。
お召しは先染の着物です。
かつては先染着物の最高級品と言われていました。
先染着物ですが、略礼装の着物としてもよく着られた生地です。
一時期、縮緬の後染めの着物人気に押され、あまり市場に出回らなくなった時期がありましたが、最近は再び見直され、ファンの多い着物となっています。
光沢があり、独特のしぼがその魅力で、生地の丈夫さもありとても着やすい着物です。
お召しの主な生産地は、西陣、米沢、十日町、桐生などです。
お召しの名の由来
御召という名は、天皇や将軍の御召物として用いられる織物についた名前です。
11代将軍家斉が好んで着用したと言われています。
お召ものからの「お召」ということですから、ネーミングはそのまんまです。
はじめて聞いた時は、なんと安易なネーミングなのかしらと思いました。
お召しが先染なのに略礼装にも用いられるのは、こう言う理由があるからなんだと妙に納得した記憶があります。
糸には二一中の糸を2本合わせて駒撚と呼ばれるきつめの撚りをかけた糸を使います。
一反に4000から8000本の経糸を使うため、丈夫な生地が出来上がります。
緯糸には二一中の絹糸を5~8本引きそろえたものが使われます。
下撚りをかけて糊づけをし、更に1mに2000~3000回の撚りをかけます。
お召し用の糸に使う糊はお召糊と呼ばれ、澱粉糊、麩糊、蕨粉糊などです。
緯糸は右撚りと左撚りの強撚糸です。
右撚りと左撚りの糸を2本ずつ交互に織り込んでいきます。
2本ずつ織り込むことを二越といい、お召しは二越縮緬と織り方が似ています。
織った後お湯につけて洗い糊を落とします。
そうすると糊で固まっていた糸がほぐれて撚りが戻ります。
この撚りの戻りがお召特有の細かいしぼになります。
糊を落としてしぼを出すことを、しぼよせ、しぼたてばどと呼びます。
製品として長さと幅を出すために湯のしをします。蒸気で伸ばすという作業です。
お召しはハリがあり、シャリ感もあります。
それでいて光沢があり、手触りも気持ちがいいです。
戦前は訪問着や外出着として着られていたというのも納得がいきます。
しわになりにくく、丈夫で着物の生地としては申し分ないものだったんだと思います。
一時期生産量が減ったにもかかわらず、こうして盛り返してきたのにはそれなりの理由があるんですね。
お召しを着はじめたら、ほかの着物はあまり着たくなくなるという方もいらっしゃいます。
小紋に比べると、お値段は少々高くなりますが、ぜひ一度きてみてほしい着物の一つです。