繭について きものができるまで

お蚕さんは桑の葉を食べて成長します。1~3mm程度の体長がたった25日間で約1万倍の大きさに成長します。こんなに成長する生き物は蚕しかいません。ここからしても神秘的な生物のような気がします。

桑の葉を食べて成長し、脱皮する・それを4回繰り返し大きくなったお蚕さんは繭を作る場所探しをします。養蚕農家では成長したお蚕さんを繭棚に移動させます。
この棚は、回転蔟(かいてんまぶし)と呼ばれ、蚕が一箇所に集まってしまったときには、蚕重みでゆっくりと回転します。回転することによって蚕がまんべんなくく棚に入ります。

私が習った繭棚は小さく区切ってあって、一つのスペースに一つのお蚕さんが入っていって糸を吐き出し繭を作るというものでした。

区切られたスペースにすでにお蚕さんが入ってる場合、そのスペースに他のお蚕さんは入っていきません。1匹1スペースにきちんと入ります。自然の原理ってすごいなと思います。

それでも、どこの世界にもあまのじゃくさんはいるもので、2匹のお蚕さんが一つのスペースに入ってしまいそのまま繭を作ることもあるそうです。

そうすると、それは正規の糸になりません。
玉繭と呼ばれるもので、廃棄対象のものでした。
その玉繭やくず繭、出殻繭(でがらなゆ)を使い、それを真綿にして糸を紡いで出来たのが紬糸です。
もともとは廃物利用でしたし、普段着や野良着にされていたものでした。
その理由は、穴があるため長い生糸がとれなかったからです。

くず繭や出柄繭は傷ついたりした繭です。繭はお蚕さんがさなぎとなった状態ですから、成長すれば繭を押し開けて出てきます。穴の開いた繭からは当然ですがつながった糸はとれません。

繭からとれる糸は全部つながってます。
その長さは1300m~1500㎡です。とんでもない長さの糸をお蚕さんは約2昼夜、48時間糸を履き続けて繭を作ります。

繭について

繭の大きさは小さいもので径約2cm。大きいもので3cm~3.5cmくらいです。

色は白と思われがちですが、黄色やきみどり、茶色もあります。白いものは養蚕で、色のついたものは天蚕(てんさん)です。天蚕は野生の蚕がつくる繭で、テンサンの他にサクサン、タサ-ルサン、エリサンなどがこの天蚕にあたります。
皇居の紅葉山御養蚕所で皇后陛下が飼育されていらっしゃる「小石丸」は日本在来種でこの小石丸は純白の繭です。

繭の重さは約2グラム、形は楕円形が主です。
繭糸長さは通常1300m~1500m。特別な繭である小石丸は短いです。400~500mの長さです。

着物一反つくるのに必要な繭は約3000個です。
この分量できもの一着分(1反分)幅約36cm、長さ約12mの絹織物ができます。

シルクのネクタイ1本に必要な繭は約140個。けっこう多いなと思いますが、着物が3000個必要なのを考えると、そこに必要な繭の分量はかなりなものです。
一反分の絹糸を準備するまでにも相当な手間がかかっているということです。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする