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友禅のお話しをしてきましたので、補足の意味でこの記事をかきます。
友禅には三大友禅とされる「京友禅」「加賀友禅」「東京友禅(江戸友禅)」があります。
これは友禅の種類です。産地によって名前も技法も変わります。
これらにたいして、「糸目友禅」「本友禅」「無線友禅」は友禅の技法です。
種類と技法、どう違うの?と私は最初疑問を持ちました。
学べば学ぶほどややこしくなり、もう何が何だか分からないという状況に陥ったこともあります。
落ち着いて、落ち着いてと自分に言い聞かせ、しっかりと理解しながら進めていったのが結果的によかったと思います。
まだ生徒の時、資格試験というものを受験しました。この試験は今でも実施されています。受けても受けなくてもどちらでもいい試験です。ですが私は受けていてよかったと思います。
その時苦労して覚えたことが今の講義をするのにもとても役立っているからです。
本題からそれてしまってすみません。糸目友禅と本友禅と無線友禅についてのお話に戻ります。
糸目友禅と本友禅は同じです。ですから手描き友禅の技法は「糸目友禅」と「無線友禅」に大別されるということになります。
それぞれについて少し詳しく書いていきたいと思います。
糸目友禅(本友禅)
模様の輪郭を縁取りした白い線が特徴です。この白い線が糸目のように見えることから糸目友禅と言われています。
この糸目がなぜつくのか?話を聞いたり技法の説明を見たりすると簡単に納得できました。
糸目は糊の跡です。
友禅染で色を挿す場合、隣同士の色と色が混ざらないようにするために模様の輪郭を糊で描きます。
糸目友禅の防戦に使う糊を「糸目糊」と言って、これはもち米の粉と米糠(こめゆか)も石灰や食塩を加えたものです。それを渋紙で作った筒に口金をつけたものに入れて絞りだしながら線を描いていきます。
ケーキやクッキーなどお菓子作りをしたことがある人なら、アイシングやチョコレートで文字や絵を書く時に使う長三角の小さいコルネを思い浮かべて下さい。あれに似た感じです。
残念ですが、最近の糊はゴム糊を使うところも多くなっているそうです。時代と共に便利にはなっているんでしょうけれど、少し寂しい気もいたします。
糸目友禅は技法の名前ですから、産地によって京友禅、加賀友禅、東京友禅に区別され、それぞれの特徴を持った友禅に仕上がります。
糸目友禅は、京友禅にも加賀友禅にも東京友禅にも使われる技法であるということです。
無線友禅
糸目友禅のように糸目がないのが特徴です。
染料を含ませた筆や刷毛で生地に直接絵を描くように模様を染めています。
豆汁(ごじる)と布海苔(ふのり)で地入れをした後染料で描き染めします。蒸して模様部分にに糊伏せをして地染を行います。
こちらも糸目友禅同様今では技法が少し変わってきているようです。
地染を先にしてspmぴ絵も染料に豆汁やカゼインを混ぜて絵を描きます。
カゼインは牛乳に含まれるタンパク質の一つで、増粘剤や保水効果を高める安定剤・結着剤などの役割をもちます。
また、にじみを防ぐために布地の下に火(熱源)を置いてあぶりながら描いていきます。
そのほか布地をあらかじめ水で濡らし染料の滲みを逆利用して模様の輪郭をはっきり出さない描き方もあります。
無線友禅はその技法から、豆描き友禅、炙描(あぶりがき)友禅、濡描友禅ともいわれます。
無線友禅は東京友禅の技法として多く用いられています。
ですが、京都の作家先生の工房に見学に行きますと、下に電熱器を置いて絵を挿している先生もたくさんいらっしゃるので、私としては東京というより、京都というほうが印象深いです。
無線友禅で有名なものとしては、室町末期の辻が花染めの墨書きや江戸時代の尾形光琳の冬樹小袖です。
最高の染技法である友禅染、本物は値段も高くなりますが、身につけた時のうれしさは断然違います。
ご自身のものでも、最近多くなってきているレンタルでもいいと思います。
友禅染の着物に袖を通して頂きたいなと思います。