第一礼装の留袖や振袖が着る人、着る場所が限定されやすいのに対して、略礼装の着物は既婚未婚での区別や年齢による決まりがあまりないので、着る人の制限が正礼装ほどはありません。
略礼装の着物は種類も豊富で、華やかな着物が好きな方、シンプルであまり柄がない着物が好きな方、あまり派手なものは着たくないけど、きちんとした着物を着たい方、などなど、多種多様に選んで着ることが出来ます。
訪問着
位置付けとしては留袖、振袖の次にくる着物です。格は略礼装ですが、略礼装の中でも特に華やかで豪華な物が多いのが、この訪問着です。模様付けは絵羽模様で、仮絵羽と呼ばれる仮縫い状態の着物に模様付けをします。キャンバスに絵を描くように自由に模様付けをすることが出来ます。
訪問着はミス、ミセスを問わず着ることが出来る着物です。結婚式では遠い親族、未婚の親族、友人、知人、上司、部下など、様々な立場の方がお召しになることが出来ます。
結婚式以外でも、パーティーやあいさつ回り、結納等にもふさわしい着物です。
つけ下げ
つけ下げが生まれた背景には、訪問着を略式で作ることによって、製作時間の短縮や、コストの削減などの理由があります。模様のつけ方は、訪問着が仮絵羽にして柄付けするのに対し、つけ下げは白生地の反物に、あらかじめ袖(そで)、身頃(みごろ)、衽(おくみ)、衿(えり)になる部分に墨付けして、袖山、肩山に向かって模様が全て上向きになるように柄付けされます。
訪問着風に模様付けされたつけ下げを、「つけ下げ訪問着」とか、「絵羽つけ下げ」といいます。
訪問着よりも柄は少なくなりますが、格では訪問着とつけ下げは同格です。どちらも略礼装の着物です。
「着尺つけ下げ」とか「つけ下げ小紋」と言われるものもつけ下げですので、略礼装の着物です。
着尺つけ下げ、つけ下げ小紋は、袖山、肩山に向かって模様が全て上向きに染められるのは絵羽つけ下げと同じですが、柄は絵羽模様ではなく、小紋と同じように繰り返しのパターンになっています。
着る人や、着る場所は、つけ下げも訪問着同様です。
色無地
一色染めの着物を言います。ただし、黒の一色染めの着物は色無地とは呼びません。こちらは喪の第一礼装である、喪服になります。
略礼装として色無地を着るのであれば、背中に一つ紋を入れるのが一般的です。
色無地の着物はあわせる帯によっては、略礼装よりも格が低くなる場合があります。名古屋帯やカジュアルな帯を合わせた場合は、外出着のくくりになります。
略礼装として着る場合は、袋帯または綴の名古屋帯を合わせます。
色無地は一色染めですが、生地に地紋が入っているものが好まれますし、多いです。
盛装として着る場合は地模様の柄にこだわる必要はありませんが、弔辞の略礼装として着る場合には吉祥文様の地模様は避けます。同時に派手目な色は避けて、薄めの色に黒共帯を合わすのが、喪の略礼装です。
略礼装の着物は、結婚式、各種パーティー、入園入学式、結納、あいさつ回り、お宮参り等々、着る場所は多い着物です。年齢の制限はありません。ミス、ミセスの区別もありません。
年中いつでも着物を着るのなら、袷、単衣、うすものと3種類の訪問着が必要になりますが、最近はレンタルもだんだん良くなってきているので、自分で持つのもいいですが、レンタルでも良いんじゃないかと思います。
ただ、自分の訪問着を持つことはお勧めします。着物は、洋服と違って何十年も着ることが出来ます。現に、私は20年以上前に買った訪問着に今でも袖を通します。求める時には、20年後も着れるであろう着物を探します。
こういうチョイスは、洋服には出来ない着物の選び方のひとつです。
何十年も着れるのであれば、ドレスよりもずっとコスパは良いのではないかと思っているのです。