着物の着方を習いたての頃、街で着物を着ている人を見ると、目で追っていました。ステキだなー、私もあんなふうに着物を着てお出かけしたいなーって、そう思ってました。
最初は、着物を着てるってだけで、ステキって思ってましたけど、お稽古を重ねていくうちに、「きれい」と「きれいじゃない」の違いにも目がいくようになりました。失礼な話です。自分ではきれいに着れないくせに、人の着物の着方を批判するような目で見るなんてね。
毎週、毎週、先生の着物姿を見ていると、目が慣れてくるんですね。きれいな着方が脳にインプットされるんです。
そうすると、きれいじゃない着物の着方を見る時に、違和感を感じる反応をしてしまうんです。私にもそんな時期がありました。
ですが、自分で着物が着れるようになり、教えるようになると、着物の着方が「きれい」とか「きれいじゃない」とか、そういうことがあまり気にならなくなりました。
もちろん、試験などのときは、審査のポイントもありますし、当然きれいに着ることが目的ですから、きれいに着るための練習もちゃんとしてもらいます。
きれいに着物を着るのと、着物を着て出かけるのは別でいいと思うんです。大正元年生まれの、私の亡き祖母が若いころの着物姿の写真を見たことがあります。お世辞にもきれいな着方とは言えませんでした。衿幅は左右違うし、衿はぐざぐざ、しわもいっぱいあるし、おはしょりもきれいではありません。
祖母にとっては、着物はおしゃれ着ではなく、日常着だったんですね。お祝い事や、式ごとの時はきちんと着てたようですが、普段着のきもの着方には、どうやらそんなに気を使ってはなかったようです。
着物姿が「きれい」にみえるのと「きれいじゃない」と感じる違いはなんでしょう?
ポイントをおさえつつ、その違いを書きます。
襟元
「きれい」 後ろから見た時に、長襦袢の衿が見えてない。
横から見た時に、衣紋の抜き具合が、多すぎたり、少なすぎたりしない。
前から見た時に、着物の衿の幅が左右同じ。
前から見た時に、着物の衿の幅が広すぎたり、狭すぎたりしない。
前から見た時に、長襦袢の見える分量が、多すぎたり、少なすぎたりしない。
前から見た時に、長襦袢の分量が左右同じ。
前から見た時に、顔の中心と、長義の打合せの中心、長襦袢の打ち合わせの中心が1線上にある。
たくさんになってしまいましたが、全てがきちんと整うと、着物の着姿は完璧にきれいになります。
ただ、先に書いたように、着物を着ているだけで、まわりの方々は喜んで下さいます。意識だけして、出来ないところはスルーして、着物を着ることに注力すればいいのだと思います。
おはしょり
「きれい」 おはしょりに、しわがない。
おはしょりに、厚みがない。
おはしょりが、曲がってない。
おはしょりの衽線と上前の衽線がつながっている。
上前幅
「きれい」 上前が、まわりすぎていない。
上前のかぶせが、少なすぎない。
裾線
「きれい」 紬なら、後ろはくるぶしが隠れる程度。
やわらか物なら、後ろは床すれすれ。
帯の位置
「きれい」 礼装なら高め。
普段着なら、あまり高くない位置。
特に礼装用の着物を着る場合は、きれいな着方をすると、着物作者と着物を着ている人のオーラが出ます。
せっかくきるなら綺麗に着たいと思うのは当たり前の話です。
自由に着ながら、着物を着る回数を重ねたら、自然ときれいに着れるようになるのがいいなと思ってます。